皆さん、こんにちは!タビブロブログのグリーンリーブです。
毎日電車に乗っていると、特急、急行、快速、準急…と様々な列車種別を目にしますよね。これら優等種別は、多くの人が利用する通勤路線において、無料で乗れる「特急券いらずのヒーロー」のような存在です。
しかし、これらの種別は「速く目的地に着く」という共通の目的を持ちながらも、路線や場所によってその性格や役割がガラッと変わることをご存知でしょうか?
例えば、A線の「急行」は停車駅が少ない超速達型なのに、B線の「急行」はほとんど各駅停車と変わらない…といった現象です。これは、各路線が抱える都市構造、線路容量、利用者のニーズといった固有の問題を解決するために、優等種別がカスタマイズされているからです。
今回は、交通解説担当の私が、この複雑な通勤型優等種別の「性格」を8つのパターンに分類し、それぞれの特徴と具体例を解説していきます。
グリーンリーブ通勤電車の優等種別は、その路線が抱える課題を解決するための「特効薬」のようなものなんです。種別名が同じでも、路線が違えば役割が全く異なるのは面白いですよね。



急行なのにあんまり速くないなーって思うこと、たまにあります!なんで急行なのにいっぱい止まるんだろうって不思議だったんです。路線ごとに性格があるんですね!
Ⅰ. 都市型:速達性のための「必要最低限の優等」


「都市型」優等種別は、駅間距離が比較的短い、人口密度の高い都市部の路線に多く見られます。
これらの路線では、そもそも駅の数が多く、乗り通しする客にとって各駅停車(各停)に乗ると遅すぎて実用的ではないため、速達性を確保するために優等種別が設定されています。
その目的は純粋に「速さ」であり、必然的に主要駅にこまめに停車するのが特徴です。
- JRの通勤路線(横浜線、南武線など)
- 東横線・副都心線の急行
- 京王線の特急(今回の記事のテーマにあるように、特急でも停車駅は比較的多い)
- 東急目黒線、大井町線
- 東京メトロ東西線



まあ都市部は利用者も多いので各駅に停まってしまうと遅くなっちゃうのは仕方ないですよね



南武線も15年前ぐらいまでは全て各駅停車だけだったけど、利用者が増えるし6両と短いため本数増発と速達化して対策したという経緯がある
京王線特急のように、停車駅が多いことから「実質急行」と呼ばれるような種別もこれに該当します。
緻密なダイヤを維持しつつ、一定の速達性を確保するための優等種別と言えます。
Ⅱ. 特定通過型:速達性皆無の「隔駅停車」


「特定通過型」は、速達性というよりも、特定の利用者が少ない駅を通過することを目的に設定された優等種別です。
これらの種別は通過駅がわずかであり、「隔駅停車」と言われることもあります。



具体的にこの手の優等種別って遅そうな気がするね…
どれぐらいしか飛ばさないの?



路線にもよるけど通過駅率的に1~2割が多く、少ないところだと1駅や2駅とかだけというパターンも有るぐらいだ



そんなに少ないんだったらこれだけ停車するなら全部止めてもいいのでは?



いやいやこれ鉄道会社からすれば意外と重要なんだよ
まず停車には設備や人的リソースの費用がかかるためにあえて設定しているケースも少ないです。
このタイプは、費用対効果が低い駅を飛ばすことで、無駄なコストを削減する意図が強いと考えられます。
そのためか他の優等種別型に比べて速達性はほぼ期待できません。
- JR中央西線・関西線の区間快速
- JR京浜東北線の快速
- 西武池袋線の地下鉄直通準急
- 神戸電鉄の準急と急行
- 小田急の準急
- 京王線の快速



意外とこんなにあるんだ!?
鉄道会社からすれば通過駅少なくても重要なの?



かなり重要だぜ、鉄道は利益率が低いからとにかく少しの費用削減でもさえとても重要なんだ
例えば中央西線の区間快速でなんとこの区間快速は20駅のある名古屋地区うちたった2駅である古虎渓と定光寺のみしか通過しません。
これら2駅は愛知の高蔵寺と岐阜の多治見にある県境の中間駅です
この2駅しか通過しないのは残りのどの駅も利用者が多いし、末端区間は利用者が少ないから



なんだか変にここだけ通過するのもワケアリね…
まず名古屋から高蔵寺のどの駅も1万人以上と利用者が多いです。
またこの区間だけの短距離利用も多いため通過する駅があると待つ時間も増えてしまうので優等種別は不要と言っていいレベル。
また多治見駅もターミナル駅なので利用者が多い、そして多治見からは田舎になり普通も多治見で折り返すため本数が減っていくことから、利用者は少ないいえど確保のため各駅停車になります。
あとは多治見より駅間距離もより長くなるため速達化しても大して早くならないため快速運転しても無駄。
けど古虎渓と定光寺は県境にあり、あたりは山。
いずれも200人前後と同じぐらい少ない釜戸を除き他の17駅よりも利用者が少ないため需要を考えてか1時間に2本程度にとどめています。
この例は利用者の極端な差があるが、他の路線でも利用者の実態や遠近分離という複合的な理由で過剰停車防止のために通過駅が少ない種別があえて設定しているケースがあります。
Ⅲ. 遠近分離型:利用距離による「明確な役割分担」


「遠近分離型」は、路線の距離が長く、短距離・中距離・長距離の利用者が混在する郊外路線でよく採用されます。
このタイプの最大の特徴は、距離によって利用する優等種別が明確に分けられている点です。
- 短距離:各駅停車
- 中距離:準急
- 長距離:急行・特急(有料含む)
また、都市部を出て郊外に入ると、途中駅から各駅停車になる(種別変更)のも大きな特徴です。
これは、都市部の速達性を確保した後、郊外区間の需要を細かく拾うための効率的な運行方法です。
- 東武線全般
- 西武線全般
- JR中央快速線
- 近鉄大阪線、名古屋線
中央快速線は、東京から立川や八王子方面への長距離輸送を担うため、中央特快や青梅特快などが設定され、立川や豊田といった拠点で途中駅の各停接続や終着の設定がなされています。
Ⅳ. 速達型:早さを売りにした「最速最強」の優等
「速達型」は、その名の通り速達性を最優先した優等種別です。



一般的にみんなが考えている理想の快速や急行はこれを思っているものかな?



利用者的に速達の名前を見ているから理想形はこれだと思うだろうな
最高速度が速く、停車駅が極端に少ないのが特徴で、各駅停車との所要時間格差が非常に大きいのが共通しています。
この格差が路線全体の利用者に「急行・特急に乗らなければ」という意識を植え付けます。
速達型には、都心部と末端区間での停車パターンの違いから、さらに2種類に分けられます。
1. 都心通過・末端各停型(都会の路線)
都心部(ターミナル周辺)では通過運転を行うものの、末端の郊外区間では各駅停車になるパターン。
都心部の混雑区間を抜け出すことに重点が置かれています。
- JR西日本・東海の新快速(いずれも田舎の区間は各停化)
- 京急の快特(久里浜線などは各停)
- 西武池袋線急行(埼玉県側は各停化)
2. 終点まで通過型(田舎の路線)
都会・田舎に関係なく、終点まで一貫して飛ばし続けるパターン。
長距離の需要に応えるために設定されます。
- 名鉄の特急・快速特急
- ハピラインの快速
- 東武日光線の急行(南栗橋以北)
名鉄の快速特急は、有料の特別車を連結しつつも、一般車は無料で乗車でき、名鉄内では最速を誇ります。
Ⅴ. 両数制限型:ホームの長さが鍵を握る「物理的制約」


「両数制限型」は、駅のホームの長さという物理的な制約によって、優等種別と各駅停車で運行する車両の長さを変えているパターンです。
このパターンの場合、優等種別そのものの特徴というより各駅停車といった下位種別が使い分けているということが多いです。



なんで両数で使い分けているのだろう?



これには2つの理由があって両数別で種別を分けていることがあるんだ
- 都市部側:土地の関係でホームを長くできないが、輸送量が多いため、優等種別(長編成)は通過、各停(短編成)は停車として、効率的に捌く。
- 田舎側:土地はあるものの、利用者が少ないため、ホームを長くする費用対効果が見込めない。そのため、優等種別(長編成)は通過、各停(短編成)は停車として使い分ける。
この手の種別の使い分けの場合、基本的に運行会社的に効率が悪く踏みとどまっているということは確かで、ホームが伸ばせれば種別は削減できるものです。



大阪線も青山町~東青山はすべて最低でも6両に対応しているため急行が1時間に1本で十分に対応しているのに対し、東青山~伊勢中川の各駅停車のみ駅が2両のみのため追加で各停の2両編成が入り1時間に2本体制になっている



あの区間って伊勢がつくほどだから少ないのに本数増やすんですか?



あの区間は輸送量的に1時間に1本の急行で十分なはずだぜ、なので仮に伸ばすと考えれば各停がなくても問題ない。
名鉄のようなホームがない部分は締切をしている会社で行うケースがあるが、基本的に危険な行為かつ操作訓練で非効率なため見送りをしている会社が多く、ホーム長が足りない駅は通過しているパターンも多いです。
- 近鉄大阪線の急行以下と快速急行以上(都会区間で急行以下はすべて6両以下)
- 近鉄大阪線の各駅停車と急行以上(末端区間、この区間の各停はすべて2両)
- 西武線の各駅停車と準急以上(各停は地下鉄直通など一部除き全て8両、準急以上は基本10両)
- 東急東横線の各駅停車と急行以上(各停はすべて8両、急行は大半が10両、特急・通勤特急はすべて10両)
- 東武スカイツリーラインの区間準急・区間急行と準急・急行(区間は6両が基本、通常は10両、途中駅は10両対応だが浅草駅が伸ばせないため)
- 小田急小田原線の末端区間(新松田~小田原、各停が6両、急行以上が10両)
- 京阪本線の準急以下と急行以上の京都側(京都府側の一部の駅が7両までのため準急以下はすべて7両)
- 内房線・外房線・総武本線(総武快速11両以上とそれ以外の京葉快速・普通10両以下)
小田急線や西武線の一部区間では、優等種別が10両編成で運行されるのに対し、各駅停車は6・8両以下の編成で運行され、短いホームの駅に停車できるようになっています。



両数制限型なんてあるんですね!いつも乗ってる電車が10両編成なのは知ってましたけど、ホームの長さで通過する駅があるなんて、電車って奥が深いんだなぁ。
またホーム長が足りているパターンも有り、京阪のように大阪側ではホーム長はすべての駅で8両対応であるものの、普通と区間急行(他の私鉄で言えば区間準急相当するみたいなもの)は利用者があまりにも少なく7両でも過剰だったため基本的に4両化にしているパターンや西武池袋線みたいに10両でも可能だが運行効率的に池袋発着の各停は10両にせず全て8両にあえてしているケースもあります。



最近は人が減ってきているから今後このパターンはどんどん増えてくるかな?
今後統一化をすべてしている路線や直通関係を除けば両数削減はますます出てくると考えられるので、ホームが足りているけど両数別の路線は都会を中心に増えてくると考えてもいいでしょう。
Ⅵ. 通勤特化型:「通勤」の名を冠するニッチな種別
「通勤特化型」は、文字通り通勤客のニーズに応えるためだけに設定された優等種別です。
種別名に「通勤」と付くのが特徴です。
最大の共通点は、休日全てと平日昼間には絶対に運転されないことです。運行時間帯は朝晩や、路線によっては朝の上りだけなど、非常に限られています。
この通勤種別の性格は、JRと私鉄で大きく異なります。
| 運営者 | 速達性 | 停車駅 | 役割 |
| JRと一部の私鉄 | 速い | 通常の快速より通過駅が多い | 遠距離通勤客の速達性確保 |
| 私鉄 | 遅い | 通常の急行・準急より停車駅が多い | 混雑分散、途中の利用者確保 |
JR(中央線通勤快速・通勤特快など)の多くは遠近分離もしくは速達性を重視し、通常の快速よりも通過駅が多くなる一方で
私鉄(東西線通勤快速など)では小田急や京阪などの一部例外を除き、通常の優等種別よりも下位に位置し、停車駅が多くなることが多いです。
これは、主要駅間に存在する中規模駅の通勤客を拾う目的があります。
Ⅶ. 千鳥停車型:混雑を分散させる「変則停車」


「千鳥停車型」は、路線全体で慢性的に混雑し、線路容量的にキャパシティが足りない路線の朝ラッシュ時によく見られるパターンです。



これも通勤種別の一種であるが、このバージョンはまさに究極Verといえるものである
特定の区間で通過・停車を入れ替え、停車駅を意図的に分離することで、優等種別への集中を防ぎ、利用者を分散させることを目的にしています。
特徴として種別がとにかく多くなる傾向があり、西武池袋線では通勤種別で9種類もあるほど、他の路線でもこういった千鳥停車を採用する会社はいずれも多いです。
- 西武池袋線(通勤急行と通勤準急)
- 阪神(区間特急と区間急行)
例えば西武池袋線の場合、「通勤急行」は快速と急行の利用者と分離するため、通常の急行が停車するひばりが丘や快速が停車する秋津や清瀬を通過する代わりに、急行が通過する東久留米や、快速・急行ともに通過する大泉学園と保谷に停車します。
これは、急行と快速の利用者を分離することで、特定の列車や駅に人が集中しすぎるのを防ぐための工夫です。
Ⅷ. 座席指定型:快適性と優等性を両立した「混合型」
最後に、本題の無料優等種別からは少し外れますが、近年増加している**「座席指定型」(混合型)**の優等種別も紹介します。
これは、利用者が非常に多い路線において、一部の車両もしくは一部区間を有料の指定席とすることで、着席のニーズに応えるためのものです。
座席を確保したい人には有料、速達性を求める人には無料で優等性をという、両方の需要を取り込む種別と言えます。
- 速達性:種別自体は速いものが多い。(快特や特急など)
- 特徴:路線によっては途中駅から座席指定を終了し、一般車両と同じように誰でも乗車できるようになる区間もあります。
- JR西日本の新快速Aシート、快速うれしーと
- 京急の快特(ウィングシート)
- 東武TJライナー
- 西武拝島ライナー
- 京阪(快速特急・特急・快速急行・急行)プレミアムカー
- 阪急(快速特急・特急・通勤特急・準特急)のプライベース
京阪のプレミアムカーのように、既存の優等種別(特急など)の一部車両を置き換える形で導入されるケースが多く、速達性と快適性を高い次元で両立させています。
終わりに:優等種別の「深読み」で通勤・旅行がもっと面白くなる!
いかがでしたか?
普段何気なく乗っている「急行」や「快速」も、その裏には各路線が抱える様々な課題や、通勤客のニーズに応えるための綿密な戦略が隠されています。
今回は8つの分類に分けて解説しましたが、もちろん複数の性格を併せ持つ「ハイブリッド型」の優等種別も存在します。例えば、京王線の優等種別は「都市型」と「特定通過型」の特徴を併せ持っていると言えるでしょう。
路線ごとの優等種別の性格を「深読み」することで、日々の通勤や旅行での乗り換えが、きっともっと面白くなるはずですよ!


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